2008年3月12日水曜日

モンゴルの残光、読む

すっかり今日なんかは春で、暑かった。
 オープン戦まっさかり。スワローズのスターティングメンバー表を見るたんび、山口百恵の「イミテーション・ゴールド」をつい口ずさんでしまうのは、オレだけでしょうか。もちろん、新鮮でいいし、由規をはじめ、期待の若手が頑張っているんだけど、「ごめんね、去年の人と、また、比べている」。
 
 久々にハーバーのソフマップ行く。DVD-Rとか買う。DVD-R、amazonの方が、絶対的に安い時期があったが、今は、ソフマップの方が安い。このあたり、どうなっているのか、ようわからん。
 バルクのハードディスク安くなっており、500GBで9,480円という価格。1TBも最も安いのが22,800円あたり、にまで下がっているじゃないか。ちょっと迷うが。すぐさま、現実に戻って、阪急の地下の寿司屋で寿司を喰う。安くて旨い。
 

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 "モンゴルの残光 (ハルキ文庫)" (豊田 有恒)
 

内容(「BOOK」データベースより)
成吉思汗紀元838年、世界は征服者たる黄色人種と被征服者の白色人種に二分されていた。支那本土に築かれた強大な元帝国では、白人は奴隷と化していたのだ。白人シグルト・ラルセンは、圧制に喘ぐ人々が作り出し秘密結社「黒耶蘇」に身を置き、日々高まる抵抗運動の激しさを感じていた―。元帝国支配の歴史を改変すべく、シグルトは、時航機『刻駕』を駆って十四世紀の元へと旅立った!著者畢生の傑作長篇SF。

 この前、"誰も知らない 世界と日本のまちがい 自由と国家と資本主義" (松岡 正剛)読んで、世界史のアウトラインがほんのりほんわかほんの少し、わかった気がしているもんで、以前ブックオフ系の店で買った、豊田有恒「モンゴルの残光」(講談社文庫版)を読む。一週間かかったけど。中学生の頃読んで、もう、卒倒するほどオモシロかったのだが、今もそれに近い面白さを味わうことがでけた。オレの感性が十代のままなんじゃ、と自慢したいが、いやあ、小説として非常に良くできているだけだと思う。

14世紀に元が世界制覇に成功した歴史を持つ、もうひとつの「現在」、そこでは、黄色人種がトップに立ち、白人はひどい差別下にある。そこで、ボロボロになった白人が、タイムマシンで14世紀に戻り、元の世界制覇を阻止しようとするわけだ。ところが、あれやこれやあれやこれや。

 主人公のいた現在社会では14世紀に元が世界帝国を作ることに成功して、産業革命も第一次世界大戦、第二次世界大戦も、黄色人種側で行われてる、となる。この部分がスゴい。日本は倭国のまんまだが、その世界ではイギリスの役割を果たしていて、アメリカへ移住し開拓するのは、倭国の仏教徒たちで、西海岸からずっと東へ開拓していき、その模様は後世に「東部劇」となったりする。イギリスが日本で、中国がフランスとかドイツとかで、ユーラシア大陸をひっくりかえした感じか。たとえ、黄色人種が世界を制覇しても、世界大戦はやっぱり起きる(起きた)のだ、というわけだ。このあたり、シビレる。

 14世紀の元、というのを舞台とするわけだから、緻密な時代考証と、著者自身の史観がしっかりさせた上で、「もう一つの世界史」を構築しないとアカンわけで、並みの作家ならそこまでで、力使い果たし、人物像がおろそかになるところ、主人公を始め元朝の海王、その弟愛育梁バトラ(あいゆるはりばとら)とか魅力的なキャラに仕立て上げているもんだから、感情移入しやすく、こんな理屈っぽさそうなストーリーなのに、最後は、泣いてしまったりする。


 まあ、同種のテーマを持つ作品にスピンラッドの「鉄の夢」とかディックの「高い城の男」とかあったが、これ読んだ後では、スカスカ、ちゅう感じがしたものだ。

 しかし、豊田有恒は惜しい。筒井康隆より若いがデビューは先で、この作品は、著者29才で最初の長編小説というから、いかに当時スゴかったか。筒井康隆では駄作の部類に入る「馬の首風雲録」(1967年)と同時期の筈(まちがってらゴメン)。

 今回読み返した、ブックオフ系で105円のは、講談社文庫版で、解説が平岡正明で例によって非常に深い考察が加えられているんで、ラッキーだった(ただ、この文庫の著者の「あとがき」はちょっと・・・と思ったけど)。

 上にリンクしてるように、今もフツーに本屋にあるのが、嬉しい。

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