クレイジーケンズ マイ・スタンダード
クレイジー・ケン・バンドの存在はもちろん、知っていた。そいでも、惹きこまれそうだったので、「敬遠」していた。あたりまえである。みんな、「ヨコハマ」という街の恐ろしさを知らん。
今、バリバリの本牧の現役の不良がやっているバンドである。ということは、つまり、その怖ろしい怖ろしい街、「ヨコハマ」が、長い歴史もひっくるめ、丸ごとで攻めてくるわけである。
わしは神戸の人間であるが、不幸極まりないことに、オレはヨコハマ生まれ(母親が実家に戻って近くの病院で出産したため)で、しかも、2年は野毛の花咲町に住んでいたこともあるのだ。メリーさんも知っているし、吉田衛氏生存中の「ちぐさ」だって行ったことあるんだ。
そんなオレが万が一でも、クレイジー・ケン・バンドにイカれたら、神戸も何もかも放り捨てて・・は、もったいないから、換金して、寿町でも黄金町でも、引っ越し、ともかく、しばらく、中華街で三食取ってヨコハマの人間になろうとするだろう。その上で、ライブに行ったり、CDをクルマで大音量で聴くことであろう。
読んで、もちろん、横山剣氏のいわば自伝であるから、金網のフェンスの向こうにあったもう一つの「ヨコハマ」の胸を引き裂かれるような、ウットリするような昔の話もには、素直に胸をきゅんきゅんいわせて(オレがそこにいなかったクセに何故か懐かしい)、幼い頃の父親との旅行の話とかには、素直に涙ぐみながら、またヨコハマの不良特有の武勇伝には、血をたぎらせながら、また、音楽遍歴バンド遍歴には興味をかきたてれられながら、読んだのだが、やっぱ、オレが嬉しかったのは、音楽そのものに関する以下の部分である。全部挙げていくと、相手は現役のミュージッシャン故、キリが無いので、オレが一番頷いた順に3つだけ。
・キャロルの「甘い日々」が好きでカヴァーしたこと。
・女性ヴォーカルには、「コブシ」が無いとアカンということ
・「聴いた音その音に得体の知れない何かが含まれている、その感じもまたおれの感じるロックンロール質なんだ」(P.469より)
クレイジー・ケン・バンドがキャロルの「甘い日々」をカヴァーしていたなんて知らんかったし、まだ、聴いていないが、キャロルの「甘い日々」、もう、女性のセリフがからむとこなんか、最高にオレも大好きなので、なんか、すごく嬉しい。
2つめは、オレの用語では「パンチ」。
3つ目は、ちょっと、ご覧のとおり、このブログ、停滞気味で、「だいたい、音楽聴いて、感想文垂れ流すんはアホとちゃうんか」と思い始めていたのだが、そう、そーそーそー、音楽を聴いて、「得体の知れない何か」を感じてしまった以上は、やっぱ、その「得体の知れない何か」のことを書かなアカン、もちろん、今までの経験上、「得体の知れない何か」のことを書こうとすればするほど、余計「得体の知れない」もんになり、最後ぐしゃぐしゃにしてまうのだが、そいでも、やっぱ、やらなアカン、音楽聴いて、ソレを感じたら、やっぱ、やらなアカンわ、音楽を聴くだけの人間だからこそ。
次から次へ「得体の知れない」のにレッテル貼って、あらかじめ用意してあるたくさんの箱のどれかにぶち込んでいって、わかったようなフリするんはカシコのプロの評論家にまかせておけばエエのである。