連休中から、隆慶一郎にハマっている。「隆慶一郎」病がぶり返したというべきか。
再読ながら、「捨て童子・松平忠輝」上中下、ほぼ一挙に読み、柳生絡みの短篇集をいくつか読み、こうなると、一番好きな「影武者徳川家康」にしようかと思ったが、未読の「花と火の帝」を読み始めた。これが、嗚呼、徳川幕府黎明期の「和子入内」を巡る将軍家VS天皇家という史実の世界に、超人的な肉体、忍法はもとより、呪術さえも操る天皇の隠密(もう、殆どエスパー!!)たちの活躍で史実と史実の間を埋めようという、どないしても、血が湧いて、肉が躍ってしまう小説だ。
「徳川家康」(今回の家康は世良田二郎三郎じゃない)像はちょっと異なるが、隆慶一郎最大の悪役「徳川秀忠」やその手下「柳生宗矩」は健在、天皇の隠密四人のトボけた感じ、後水尾天皇のあまりにも魅力的なこと、もう、あまりの面白さにページをめくるのを忘れるが、隆慶一郎氏の絶筆ゆえ、中絶しているのを思い出し、読み終えてしまうのが怖い。
これというのも、NHK大河「清盛」が「盛りすぎ」で、オチのないコントの連続みたいな感じで落ち着かないお陰である。
ただでさえ、ややこしい、天皇上皇のあれやこれやに、待賢門院美福門院のあれやこれやが絡み、これまたややこしい、公家間のあれやれやこれや、もちろん、平家自体もややこしいあれやこれや、これだけでもエエのに、何故か源家のこれまたややこしいあれやこれやをかてて加えて、しかも、それらを一回の放映分でちょこちょこ同時進行するという、わけのわからん作りになっている。
45分で、5分ほどの「断片的」なストーリーが連続する。つまり、すき焼きをちょいつまんだかと思うと、水炊きをちょいつまみ、キムチ鍋をちょいつまみ、ブイヤーベースをちょいつまみ、みたいな感じで落ち着かん。しかも、最悪なことに、それぞれの鍋の材料、つまり、キャスティングは、NHKらしく、成金的な贅沢なキャスティングなので、余計ややこしい。
しかも、物語のナレーションを、変に凝ったため、こともあろうに「源頼朝」公にさせているから、そのややこしさは致命的である。
そこまで凝っているくせに、肝心要の主人公「平清盛」は、元服済んでも顔が汚れているのに気がつかない阿呆で、坂本龍馬タイプのすぐに興奮して大声出すだけの「バカ」ときているから・・。
伊東四朗や三上博史中井貴一深田恭子に喰われるは仕方ないとしても、他の殆どの役者にも「喰われて」しまっている。どんどん、回が進むに連れ、新しい役の俳優が登場するたんびに、主人公は「喰われ」、どんどん、主人公の影が薄くなっていく・・・というのは、オレがいうのもなんであるが、冒険しすぎではないか?
毎回のように、変な節の「遊びをせんとや・・」がすぐにBGMで流れ、やたらわけのわからん和歌出てきたり、いつも土埃が立って視界が悪くぼやけている・・・と云えば、もう、60年代後半流行ったサイケムーヴィ、ドラッグムーヴィのノリである。 こんだけのことを詰め込んだのは、スゴいと思うし、実験的と云えば実験的、冒険的と云えば冒険的。まあ、NHK大河ドラマとしては、完璧に破綻しているが。視聴率を上げようと思えば、源家か摂関家あたりのエピソード丸ごと切っちゃって、余計な登場人物整理するしかないと思うが、成金NHKにそれだけの度胸があるとは思えん。
観ていて何度も、いっそのこと、ジェームス・ジョイスの「ユリシーズ」、読んだろか、と思ったくらいである。「ユリシーズ」の方がこの「清盛」より、シンプルだろう。まあ、隆慶一郎、読み返すことにしたが。

